なぜ借方が左側?複式簿記の歴史・由来から考え方をわかりやすく説明

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簿記の勉強
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「なぜ左側を借方といい、右側を貸方というのか?」

簿記を勉強しはじめた人なら、たぶん、いちばん最初にこの疑問にぶちあたると思います。
私も疑問に思ってました。

左側と右側でいいじゃん?
ダメですか、そうですか。

意味が分からなくても「そういうもんだ」と覚えてしまえば、勉強する上では問題ないです。
でも、仕訳で「借方」「貸方」と見るたびにモヤモヤする毎日…。

そんなことが続いたある日、このモヤモヤはすっきり解決しました。
この記事では、簿記学校の講師から教えてもらった、借方が左側、貸方が右側になっている理由をわかりやすく説明していきます。

ぶっちゃけ、簿記の歴史をひも解くお話なので、諸説あるかもしれません。
でも、大事なのは自分で納得できること。

私の中ではずっと感じていた疑問が解けて、すっきりしました。

こんなこと簿記試験には出ませんが、簿記学習の合間の気分転換にでも、読んでもらえれば嬉しいです。

 

借方・貸方の意味がわからない3つの謎

最初に、どの辺が謎でモヤモヤして引っかかって、「借方貸方ってなんなん!」と学習の邪魔してたのか、整理しておきます。

「借方」と「貸方」の謎
✅ 「借方」「貸方」という名称になった理由
✅ 貸付金を借方に、借入金を貸方に書く理由
✅ そもそも借方が左側、貸方が右側になっている理由

この中で、厄介だったのが3つめです。
1つめと2つめは、ググってみてもそこそこ見つかるので、疑問点を整理しながらサラっと書いておきます。

 

「借方」「貸方」という名称になった理由

まず謎の1つめ、なぜ「借方」「貸方」と呼ぶのかです。
この言葉って簿記以外の分野だと見かけないですよね。

しかも、(今では)借りるとか貸すとかの意味は無くなっていて、単に「右側と左側をそう呼びます」なんて教科書にあったりするやつです。

 

「借方」「貸方」という名称になった理由
もともと欧米の複式簿記では、左側を debit、右側を credit と呼んでいた。明治時代、アメリカから日本に複式簿記が輸入されたとき、福沢諭吉が debit を「借方」、credit を「貸方」と翻訳したのが由来。

壱万円札の人だ! なんかお金関係してそう、簿記っぽい

英語と日本語の違い(横書きか縦書きか、左ページから書くか右ページから書くか)もあって、福沢諭吉先生も翻訳するときにはたいぶ苦悩されたようです。

ちなみに、debit の語源はラテン語で「負債を負っている(側)」、credit の語源はラテン語で「貸し付け」になります。
「負債を負っている」ってのは「お金を借りている」ってことですかね。イメージ的にはわかるます。

 

貸付金を借方、借入金を貸方に書く理由

続いて、謎の2つめ。
これは簿記を学び始めたころはかなり気持ち悪かったです。使ってる漢字が真逆ですからね…。

 

貸付金を借方、借入金を貸方に書く理由
取引相手から見ると、貸付金は借りているお金、借入金は貸しているお金。だから、貸付金を借方に、借入金を貸方に書いている。

フゥン、なるほど!
借方・貸方とは「相手の立場に立ってみたときの呼び方」であると、そういうわけですね。

別の言い方をすると、「私が」借りた・貸したではなく、客観的に記録するためにそうなったようです。
それなら納得できるしワカル。

 

そもそも借方が左側、貸方が右側になっている理由

そして、謎の3つめなんですが…これがわからない。
「欧米では左側を借方、右側を貸方と呼んでいたから」という説明はあるんですよね。

※もちろん先ほど書いたように、借方・貸方に相当する英語である debit, credit が使われています。

じゃあさ、どうして欧米では「借方」を左側に書いて、「貸方」を右側に書いているの?

この理由が見つからない。

これ、なんなら逆に書いても、簿記体系としては成り立ちますよね。

今までずっと左側を「借方」、右側を「貸方」でやってきてるので、逆だとかなり気持ち悪い。
でも、資産や費用を右側に、負債や収益を左側に書く仕組みにしても、理論的には問題なさそう。

理論的にはどっちでもOKということは、今のようになった理由が何かあるはず。
そうなった由来を知りたいのですー。

というわけで、知りたかったのは謎の3つめです。

 

歴史を知るとわかりやすい!借方を左に、貸方を右に書く理由

この章では、謎の3つめの答え、というよりも、教えてもらってすっきり納得できた理由を、例を交えながらわかりやすく書いていきます。

もう一度整理しておくと、知りたい謎はこれです。

✅ そもそも借方が左側、貸方が右側になっている理由

この謎の話と一緒に、他の謎の話も出てきます。
そこはついでの話というか、「こんな理由があったからこうなった」という簿記の歴史の流れがあるので、出てきたら説明しておきます。

 

お金を借りてくれた人を一枚紙に記帳していた時代

昔むかしあるところに、お金を貸す人と借りる人がおったそうな。
日本昔ばなしはおいといて。

最初は、お金を貸した相手の名前と貸した金額を、記帳していました。

このときの帳簿はまだ、一枚紙か保存にすぐれた羊皮紙のようです。

それをくるくる巻いたり、折りたたんだり。
中世が舞台の映画とかに出てくる、ちょっとファンタジーでかっこいいやつですね。

コロンブス 100万QP
ドレイク 200万QP
※人物名や単位にとくに意味はありません。

お金を貸す人は、今でいうと銀行業なので、銀行家としておきます。

そして、記帳されているこの人たちは「お金を貸した相手」なのですが、

これを言い換えると、「お金を借りてくれた人」になりますね?

んー?おお、なります!

ここが謎の2つめと関係してくるのですが、取引相手の視点で考えます。

銀行家の立場じゃなくて、お客様の立場です。
なので「貸した人」ではなく「借りてくれた人」です。

さらに「借りてくれた方」って呼ぶと、もう少しお客様感がでますね。

借りてくれた方
コロンブス 100万QP
ドレイク 200万QP

こんな感じ。

昔の人はこんなふうに考えてたんだなーと分かると、

(貸付金)を「借りてくれた方を書く欄」=「借方」に書く

のも納得できます。

謎その2のモヤモヤも消えて、少しすっきりです。

 

お金を貸してくれた人を下の余白に記帳した時代

現在の複式簿記のルーツは、14世紀のイタリアにあるようです。

大航海時代のちょっと前の時代。
探検家や貿易商が帆船で出かけていって、儲かる商品を見つけて帰ってきます。

実際には「船で出かける」なんて簡単なもんじゃなく、当時の航海は命がけ。
嵐で遭難すれば船ごと全滅するし、そもそも航海に出るのに相当な資金が必要になります。

でも男たちは、グランドラインを目指して航海に出るわけです。ワンピースの世界です。
資金を借りて集めても、成功すれば莫大な富と名声が手に入る。

なんたって、海賊王ゴールド・ロジャーの財宝ですからね!

※違います、ワンピースじゃないです。ほんとは交易品です。

こうして金貸し業がさかんになると、銀行家にお金を貸す人が出てきます。
交易が成功して銀行家が儲かったら、分け前をもらいます。

今までは貸した相手だけでしたが、今度は、お金を借りた相手も記録しておく必要が出てきます

そこで銀行家の人は、「借りてくれた方」を書いていた紙の、下の方の余白に「貸してくれた方」の情報を書くようになりました。

借りてくれた方
コロンブス 300万QP
ドレイク 200万QP
貸してくれた方
カエサル 100万QP
ギルガメッシュ 500万QP

こんな感じになります。

こう見ていくと、借方の考え方と同じように、

(借入金)を「貸してくれた方を書く欄」=「貸方」に書く

のが納得できます。

 

帳簿がノートに!左ページに借りてくれた人を書く時代に

ここまでで、記帳している情報としては複式簿記のルーツの完成です。
次に、記帳していた紙のほうに変化が起きます。

今までは一枚紙(羊皮紙)に記帳していました。

一枚の紙なので、まず「借りてくれた方」の情報を上の方に書いて、「貸してくれた方」の情報をその下の空いてる部分に書く。
これが、さっきまでのお話です。

借りてくれた方
コロンブス 300万QP
ドレイク 200万QP
貸してくれた方
カエサル 100万QP
ギルガメッシュ 500万QP

 

さーてさて。
15世紀になって活版印刷が発明されると、紙製の製本された本が普及していきます。

紙が大量に使われるようになると価格も安くなっていきます。
紙製の本を安価に製本できるようになると、冊子になった紙製のノートが普及していきます。

では、一枚の紙に記帳していた情報を、本のように綴じたノートに記帳するようになると、書き方はどうなりますか?

えーっと。左のページから書いていく…?

欧米の本やノートは、左からページが始まります。横書きなので。
これは今の横書きノートと同じです。

それじゃあまず、最初に書いていた「借りてくれた方」を左のページに書きましょうか。
次に、下の余白に書いていた「貸してくれた方」を右のページに書くのが自然ですね。

すると、こうなります。

借りてくれた方 貸してくれた方
コロンブス 300万QP
ドレイク 200万QP
カエサル 100万QP
ギルガメッシュ 500万QP

借方が左側、貸方が左側になってる!

いーや!俺は右に借りてくれた人を書くね

そう言われると、終わりなんですが…。

実際、書き方を変えなかった銀行家や、右のページに借りてくれた人を書いた銀行家もいたようです。
ただ、左のページに借りてくれた人を書く銀行家が多数派だったので、今の形が残ったのでしょうね。

 

✅ 借方が左側、貸方が右側になっている理由
一枚紙の上の方に「借りてくれた方」、下の方に「貸してくれた方」を書いていた。

帳簿が一枚紙から冊子になったとき、左のページに「借りてくれた方」を、右のページに「貸してくれた方」を書くようになった。

借方が左側、貸方が右側になった。

これが、簿記の歴史に由来する、「借方が左側、貸方が右側になっている」理由です。

歴史の話なので、諸説あるでしょう!
でも私はこの歴史の流れがとても自然に思えて、すーっと納得できたんですよね。
すごくワカル。

それ以来、「借方って左だっけ、右だっけ?」と迷うこともなくなりました。

まあ、しばらくして簿記に慣れたころには、反射的に借方・貸方が頭に浮かぶようになったので、今となっては豆知識みたいなものです。

 

ちなみに、この話は大原簿記学校が実施する職業訓練で教えてもらいました。
簿記・経理の職業訓練ってどんな感じなのか? 興味のある人はこちらの記事もどうぞ。

 

あとがき

ここまで、借方が左側、貸方が右側になった歴史話をしてきました。
歴史の話なので、ぶっちゃけ「真実は違うかもしれない!」って思ってます(笑)

それでも、大事なのは自分が納得できることで、簿記の学習が捗ればいいんです。

簿記試験でも実務でも、こんな知識が必要になることはないですからね。
自分が面白いと思って、モチベーションあがればそれでOKです。

もう一つのメリットとして、左と右で混乱したときにも、理屈から「借方は左!」と断言できるようになることがあります。
ま、簿記の勉強続けてれば間違えないですが。
うっかり左か右かだけ記憶が無くなっても、理論的に導けます。

どうでしょう、みなさんは納得してくれましたか?

私はこれで納得できたので、もっと説得力のある理由に出会うまで、私の中ではこれが真実です。

というあたりで、それではまた。

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